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正常性バイアスにご注意を【新型コロナ対策で分かる会社の将来性】

こんにちは、皆さんの勤めている会社は新型コロナウイルス対策がきちんと出来ていますか?

過度に敏感になりすぎるのも良く無いですが、すっかり気が緩んでしまっているところも多いのでは無いでしょうか。

 

コロナに関する情報は変化するものもあり、会社経営者の方は経営に加えそちらの情報も収集して対策を練っていかなければならないため相当な心労を重ねているものと思いますので、ついつい対策を疎かにしてしまうこともあるかもしれません。

ですが、この状況でどれだけの対策を打てるかが、その会社の運命をも分けるものと私は考えています。

 

非常事態での対処能力を左右するのには「正常性バイアス」と言う人間の特性が関わっています。

今回は、正常性バイアスが働くとなぜ良くないのか。なぜ会社の将来性に関わってくるのか。新型コロナウイルスの感染拡大への対策を例にまとめましたので、ぜひご覧ください。

 

目次

正常性バイアスとは

正常性バイアス(normalcy bias)とは、予期しない急な出来事などに直面した際に、それらを日常生活にありふれた出来事の一つとして捉えてしまい「自分は大丈夫」などと過小評価してしまうヒトの特性を表した心理学の用語です。

外的なストレスに対する人間の防御機能である一方、災害などの非常事態においては「リスクの過小評価」により逃げ遅れなどの原因になるとされます。

 

正常性バイアスの例ー東日本大震災(2011)

大津波警報が出ているのにもかかわらず、実際に津波を目にするまで避難行動を取らなかった人が多かったと言われています。ある調査によると、なぜ避難をしなかったのかという問いに対して「自分のいる場所が安全だと思った」と根拠の無い楽観をしていたそうです。

正常性バイアスの例ー西日本豪雨災害(2018)

死者・行方不明者が270名を超える平成最悪の豪雨災害。
岡山県倉敷市真備町では51名の尊い命が失われてます。この地域では過去にも洪水による大きな被害があり「川が氾濫したら2階まで浸水する」と言われていたにもかかわらず、多くの人が避難行動を取らず住民の8割が自宅で亡くなっています。
ここでも「自分は大丈夫」という正常性バイアスが働いてしまった可能性があります。

 

 

組織における正常性バイアスは、リスクを増大させる

正常性バイアスは災害に限らず、あらゆる場面で芽を出します。

会社などの組織運営においても「予期できなかった急展開」は起こりうるからです。

 

どれだけ準備をしていたとしても、やはり想定仕切れない事態は起こります。

 

そのような時、どれだけ素早く危機を察知し的確に対応できるかがその組織の将来を左右するので、日頃からさまざまな情報に触れて引き出しを増やしておかなければならないのです。

 

ところが、正常性バイアスにかかってしまうと、以下のような事態を引き起こしてしまう可能性が高くなります。

 

①自分の身を守る情報に気づかない

ヒトはリスクの大きさを認識し危機感を覚えることで脳が活性化し、解決策を探そうとします。

正常性バイアスが働くとそこで思考停止してしまうため、必要な情報を得られないまま時間だけが過ぎてしまうことに繋がります。

 

②組織内で不協和が起きる

新型コロナウイルスの感染対策は個々人で温度差があります。

①的確に情報をつかんで客観的視点で対策をとる人間
②正常性バイアスにかかってしまい希望的観測で根拠のない楽観論のまま行動してしまう人間

両者とも、お互いに不満を持ってしまい不協和が起きてしまいます。

 

異常に悲観的になってしまうのも良くありませんが、あまりにも組織の雰囲気が楽観的になっている時は「正常性バイアス」が強く表に出ている可能性もありますので、注意が必要です。

 

③倒産の危機をもたらす

「絶対倒産しない」などと願ったとしても、目まぐるしい変化が起きる世の中で絶対はあり得ません。

新型コロナウイルス騒動のように予期せぬ事態が起きる可能性がある以上、最悪のケースも想定して行動しなければ、後手後手にまわり変化に対応できなくなります。

 

昨今でいえば、ITの進歩、物余り、少子高齢化など様々な変化が起きていますが、これらの変化に対応できない場合は戦略を見誤り倒産の危機を招くでしょう。

 

 

コロナ対策が出来ない=それ以外の部分でも問題がある会社かも?

コロナ禍においても、正常性バイアスは起こっています。

これは、欧米諸国などに比べて重症者・死者数が少ないことなどが影響していると思われます。

 

コロナ対応がまずい会社は、コロナ対策以外の部分でも後手後手になり得ます。正常性バイアスは日常の取り組み(訓練の有無)がそのまま緊急時にも表れてしまうもの、と考えれば当然ですね。

 

 

お偉いさんがよく口にする「想定外だった」という言葉、私は違和感しか感じません。

言い方が悪いかもしれませんが、ほとんどの場合ただの「怠慢」なのです。

 

同調社会と正常性バイアスが働きやすいため想像力の欠如を招き、いざというときに即応できないことがほとんどなのです。

 

正常性バイアスによる危機を防ぐためには

正常性バイアスを防ぐためには、情報を収集・共有する体制を整えて"訓練を繰り返す"ことが重要です。

訓練を繰り返すことで、自然に最善の手段を取れるようになります。

 

台湾の消防施設を視察に行った際に、欧州などからも参加している方々がいて話を伺ったのですが、彼らは「想定外の想定」を徹底的に訓練をしているそうです。

 

そして、考えうる想定+想定外を頭に入れて、それに対応するための作業手順を体系化。

 

プランA、プランB、プランC、プラン…(以下繰り返す)というように隊員間で頭に入れて、それを訓練するため、災害時には非常に落ち着いてスムーズに活動します。

 
彼らは、本当に静かに、落ち着いて、自分たちのタスクをこなしていきます。

 

それでいて、日本のチームよりもはるかに良い成績を残すのです。

訓練をし、対応策のカードを増やすことが、正常性バイアスを防ぐ手立てです。

 

 

実は、このような日本の組織の性質は先の大戦の頃から変わっていないと言われます。

 

緒戦では連戦連勝だった日本軍、最終的には敗れてしまったことはご存知かと思いますが単に物量や兵器の性能差だけで敗れただけでなく、組織的な性質のせいでも負けたとされます。

 

米軍は日本軍に勝つために徹底的に戦法などを研究。開戦当初は圧倒的な空戦性能で連合軍を圧倒した「零戦」を鹵獲研究しサッチ・ウィーブと呼ばれる戦法を生み出したりするなど、データを元にトライ&エラーを繰り返して常に変化をしていました。

 

対して日本軍は「型」を変えない文化。過去の成功体験を神格化し戦略を立案します。もし、想定外の事態が起きたとしても、それに対応する能力が不足していました。

この想定外への対応力の欠如が「正常性バイアス」を悪い方へ助長してしまうのです。

 

旧日本軍が犯した組織的過ちを、現代の日本の組織においても繰り返してしまっていませんか? 日本の欠点は、空気に左右されやすいことと、非常事態での対応能力の低さです。

せっかく先人たちが示してくれた教訓ですので、我々はこれを活かさなければなりません。

 

 

最後に、沖縄特攻作戦に参加して撃沈された戦艦大和の乗組員が死を覚悟して語った言葉を紹介します。

 

「進歩の無い者は決して勝たない。負けて目覚める事が最上の道だ。日本は進歩ということを軽んじすぎた。私的な潔癖や徳義にこだわって、真の進歩を忘れていた。」「敗れて目覚める、それ以外にどうして日本が救われるか。今目覚めずしていつ救われるか。俺たちはその先導になるのだ。日本の新生に先駆けて散る。まさに本望じゃないか」

「戦艦大和ノ最期」吉田満著 講談社文芸文庫 1994 白渕馨海軍大尉の言葉より引用

  

 

過去の失敗を知り、同じ過ちを繰り返さないようにするのが、今を生きる私たちの使命では無いでしょうか。

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